【社会福祉法人】社会福祉充実計画の例

計画造成された公園 社会福祉法人の会計

社会福祉充実残額が生じ、社会福祉充実計画の策定を行うことになった場合、まず始めに「実施事業の検討」を行います。大きく分けて3つの事業それぞれについて、順番に残額を使うべきか否かを検討していきます。
実施事業は順番に

  1. 社会福祉事業および公益事業
  2. 地域公益事業
  3. ①と②以外の公益事業

となります。
この記事では、①と②について、どのような事業が考えられるかを挙げていきます。

 

 

目次

1位:社会福祉事業および公益事業

残額を「社会福祉事業および公益事業」に使うことを検討する場合、すでに法人が実施している社会福祉事業あるいは公益事業の延長として社会福祉充実計画を立てるのがオーソドックスです。
既存事業の見直しを行い、それを社会福祉充実事業として実施するということです。

 

【例】

  • 延長保育や休日保育などの特別保育
  • 利用者の送迎支援や食事支援
  • 施設入所者の地域生活移行に向けた取組(生活訓練の実施など)
  • 食物アレルギーを持つ利用者への対応(レシピの提供や利用者家族に対する支援)
  • 施設退所者に対する退所後の支援
  • 福祉車両(バス、タクシーなど)の運行・巡回
  • サービスの質向上のための取組(第三者評価、苦情解決窓口設置、職員の増員)
  • 職員処遇の向上(賃金上昇、処遇改善、キャリアパス制度の設置)
  • 施設の定員を増やす

 

2位:地域公益事業

地域公益事業とは、「日常又は社会生活上の支援を必要とする住民に対し、無料又は低額な料金で、その需要に応じた福祉サービスを提供する事業」とされています。
地域福祉の向上を目的とする活動であり、以下にあてはまる事業をいいます。

 

  • 社会福祉に関する福祉サービスである
  • 日常生活または社会生活上の支援を必要とする者に対する福祉サービスである
  • 無料または低額な料金で提供される

 

なお、社会福祉充実計画として地域公益事業を行おうとする場合は、「地域協議会」へ意見聴取を行なわなければなりません。
【関連リンク】「【社会福祉法人】地域協議会 FAQ

 

【例】

  • 地域の障害者・高齢者と住民の交流イベント
  • 要支援・要介護高齢者に対する入退院支援
  • 子育て家族の交流の場の設置(子育てサークルの運営など)
  • 家庭環境(生活保護世帯など)により十分な学習機会のない児童に対する学習支援
  • 自治体の委託事業に法人独自の付加サービスを提供していること
  • 介護保険サービスに係る利用者負担を軽減する取組
  • 高齢者の転居支援(物件探し、保証人契約、空き家の借り上げ、引越後の生活支援など)
  • 単身高齢者に対する見守り支援・生活支援
  • 障害者の継続的な就労の場(スーパー、市場など)の創出
  • 生活困窮者の自立支援(相談支援、食糧等の現物給付など)
  • 地域住民のためのサロン開設・生涯学習会の実施
  • 地域内の福祉人材の育成(実習生の受け入れ、研修会開催、職場体験の実施など)
  • 災害時の要介護者への支援
  • 地域における成年後見人の手続支援
  • 里親支援
  • 地域子育て支援センター
  • 地域住民に対する福祉・介護セミナーの開催
  • 地域の総合支援相談窓口の設置
  • 地域のアルコール依存者に対する支援(断酒会の開催など)

 

【地域公益事業に該当せず】

法人施設の入居者・利用者と住民の交流イベント(法人事業の一環であるため)/環境美化活動・防犯活動(地域社会の構成員としての活動であり、福祉サービスではない)/自ら移動することが容易な者に対する移動手段の提供(支援を必要とする者に対するものではないため)/地域住民へのグラウンドや交流スペースの提供(支援を必要とする者に対するものではないため)/学力向上を目的とした一般的な学習支援(支援を必要とする者に対するものではないため)/自治体の委託事業の受託(費用の補填を受けている場合)

 

社会福祉法人をとりまく経営環境は、今後悪化していくことが予想されます。
たとえば保育分野は、少子化により、厳しくなることが明らかです。
介護分野は、報酬単価の引き下げが予想されます。

 

今後悪くなることが見えている状況では、検討順位2位の「地域公益事業」まで手を広げるのは、リスクが非常に高いと考えられます。
人手不足が叫ばれている福祉業界にあって、地域公益事業という新事業に人員を割くのかという問題もあります。

 

社会福祉充実計画とは認められないもの

平成29年2月13日付の厚生労働省FAQにより、社会福祉充実事業として認められない事業が列挙されています。
以下、抜粋です。

 

  • 単に災害等のリスクに備えた積立を行うこと
  • 単に他の社会福祉法人に資金を拠出すること
  • 既存の借入金を返済すること

 

【関連リンク】「【社会福祉法人】社会福祉充実残額の算定・計画の策定 FAQ

 

充実残額の使い道・使途について

 

充実残額が多く出た場合、まず考えるべきは、施設整備が必要かどうかです。
その金額が数千万単位であれば、建物や土地に充当する考えをする法人が多いようです。

 

 

充実残額を人件費に充てる場合

 

社会福祉充実計画が終了した時のことも考えなければなりません。
上がった人件費は簡単に下げることはできません。
充実残額を人件費に充てる場合、ベースアップなのか一時金なのか、よく検討をする必要があります。

 

 

最優先に考えるべきは

 

充実残額を減らすことを最優先に考えてはいけません。
早急に充実残額を減らそうとするあまり、法人が傾いてしまっては元も子もありません。
充実計画は10年まで延長が可能です。計画を立てる際には、延長も視野に入れて検討をするべきだと考えられます。

 

「社会福祉充実計画終了時に何が残るのか」も重要な視点です。
支出ばかりが先行し、法人の事業が何も充実しなかったら、何のためにお金を使ったのか、ということになります。
施設整備を優先的な選択肢としてとらえることも必要かと思われます。

 

 

社会福祉充実残額が出やすい法人は?

 

法人内に資金があると、やはり充実残額が出やすくなっています。
多角経営や積極的な事業展開をしている法人は支出が多く、残額は出にくい傾向にあります。
また、設立してから時間が経過していたり、施設整備の際の補助率が高い法人は、充実残額が出やすくなっています。

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