会計の世界では、ほとんど複式簿記で帳簿が作成されます。
今回は、単式簿記と複式簿記の違い、また、複式簿記の基本の考え方についての記事を書きました。
目次
単式簿記
単式簿記では、お金の動きのみが記録されます。
お金が出たとき、お金が入ったときに記帳されます。
単式簿記では、保有している資産の時価等は表示されません。
自治体の歳入歳出システムなどが、単式簿記での記録の例となります。
複式簿記
複式簿記では、お金を含む財産の増減とその原因(損益)が記録されます。
お金以外の財産には、たとえば下記のようなものがあります。
資産
- 未収金
- 立替金
- 建物
- 車輌運搬具
- 器具備品
- ソフトウェア
負債
- 未払金
- 預り金
- 借入金
複式簿記の落とし穴
複式簿記で記帳する際、現金同等物が出てくる仕訳はイメージしやすいです。
お金が出ていけば、たいていは費用ですし、お金が入ってくれば、たいていは収益です。
しかし、複式簿記では、借方にも貸方にも現金同等物が出てこない取引があります。
たとえば下記のような取引です。
- A拠点からB拠点へ車輌を移管した場合
- 補助を受けて備品を購入した際の国庫補助金等特別積立金の処理
- 減価償却とそれに伴う国庫補助金等特別積立金取崩処理
上記の取引では、現金預金や未収金といった現金同等物が出てきません。
お金の動きだけで考えていると、必要な仕訳の入力を忘れてしまいがちです。
そこで、上記のように現金同等物が出てこない取引についても、確実に起票するためのコツをご紹介します。
複式簿記のコツ
それは「お金も含めた資産の増減を意識する」ことです。
「お金の残高」の変動を記録するという意識から、「資産(現金、預金、未収金、立替金、仮払金、有形固定資産、無形固定資産など)の残高」の変動を記録するという意識へシフトします。
つまり、貸借対照表の左側に書いてある科目の残高を日頃から気にするということです。
資産の残高を意識していれば、上記aでは各拠点において車輌運搬具の残高が変わったことに気付くことができますし、bでは車輌購入に伴う補助金の積立処理という意識につながります(これは福祉会計に特有の処理なので、社会福祉法人会計基準の知識は必要ですが)。
cでは、資産価値という観点から、減価償却と国庫補助金等特別積立金取崩の必要性を理解することができます。
資産の増減を意識することは、複式簿記を行うための大切なコツになります。