目次
はじめに
会計上の「のれん」について注意が必要な点をまとめました。
トピックは下記の通りです。
- 有償取得ののれんと自己創設のれん
- のれんの規則的償却について
- のれんを規則的に償却しない会計処理について
税理士試験等にお役立て下さい。
有償取得ののれんと自己創設のれん
有償取得ののれん
通常ののれん。
対価を支払って取得するため、主観を排除し客観的な評価で資産計上ができるのがポイント。
言いかえると、資産計上しても未実現利益である期待利益は計上されない。
自己創設のれん
経営者の主観が介入するため客観的な評価ができない。ゆえに資産計上は認められない。
資産計上してしまうと、同額の利益が計上される(下記仕訳参照)ので、未実現利益である期待利益が計上されてしまうことになる。
(参考仕訳)
のれん / 利益 〇〇円
のれんの規則的償却について
のれん(=投資原価の一部)を規則的に償却することは、のれん(投資の回収余剰)を資産とみる考え方と一致します。
資産は減価償却計算により費用化します。
すなわち、企業結合(買収)の成果(収益)と、その対価の一部を構成する投資差額の償却(費用)が対応するため、費用収益対応の原則とも合致する会計処理になります。
また、のれんは超過収益力なので、競争の進展等により、時間の経過とともに減価する事実も計算書類に反映させることができます。
のれんを規則的に償却しない会計処理について
規則的に減価償却をしないということは、のれんの価値が下がったときに減損処理をそのつど行っていくという会計処理を採用するということです。
この会計処理を採用すると、のれんが時間の経過とともに「自己創設のれん」に入れ替わるおそれがあります。
貸借対照表上のれんの金額が変わらないとすると、企業結合後の追加的な投資や努力によってのれんの価値が維持されていると考えられます。
この会計処理(減損処理のみ)は、のれん(=超過収益力)の減価の過程を無視することになるため、日本の会計基準では採用されていない考え方です。
おわりに
のれんは店の名前や商号、シンボルマークを表現する布ですが、
会計上の目に見えない企業価値にも同じく「のれん」が使われています。
貸借対照表で何気なく目にする「のれん」ですが、たまには思いを馳せるのもいいかもしれません。