【社会福祉法人】認可についてポイントまとめ

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目次

社会福祉法人の認可について

 以下の厚生労働省通知を参考にしました。
<障第890号 社援第2618号 老発第794号 児発第908号>
<平成12年12月1日 → 平成24年3月30日改正>

 

第1 社会福祉法人の行う事業 とは

 社会福祉法人は「社会福祉事業」「公益事業」「収益事業」の3つの事業を行います。
 事業の細かい内容は以下のとおり。

 

1. 社会福祉事業

 社会福祉法に規定する事業を行います。
 社会福祉事業が、社会福祉法人のメインの事業であることが必要。
 社会福祉事業は、必要な財源の大半を収益事業に求めるような計画の元で行われてはなりません。
 「生活困難者のために、無料又は低額な料金で診療を行う事業」は必要性が薄らいでいるため、新規参入・規模拡充を抑制しています。
 「相談に応じる事業」あるいは「社会福祉事業の連絡を行う事業」のみをもって法人設立をするときは、慎重かつ十分な審査が必要であるとされています。

 

2.公益事業

 定義は「公益を目的とする事業であって、社会福祉事業以外の事業」。何かが必要な人に対して、それを直接提供するのではなく、それを支援する事業や、それに関する情報収集を行う事業、また人材育成に関する事業などが当てはまります。
 公益事業は社会福祉法人の行う社会福祉事業のサブの位置を占めるものであって、全く関係のない事業や、社会福祉事業の遂行を妨げるような事業を行なってはなりません。
 公益事業による剰余金は、社会福祉事業または公益事業に充てることとされています。

 

3.収益事業

 定義は「社会福祉事業や公益事業の財源とするため、反復継続して行われる事業」。
社会福祉法人の社会的信用を傷つけるおそれがあるもの、投機的なものは適当ではありません。なお、法人税法上では収益事業の範囲ではない事業であっても、社会福祉法人が行う事業を収益事業として扱う場合もあります。
 収益事業は社会福祉法人の行う社会福祉事業のサブの位置を占めるものであって、社会福祉事業を超える規模で行うことは認められません。
 収益事業による収益は、社会福祉事業または公益事業に充てることとされています。

 

第2 法人の資産 について

1.資産の所有等について

(1)原則

 社会福祉法人は、社会福祉事業を行うために直接必要なすべての物件に対して、所有権を有するか、または国か地方公共団体から貸与あるいは使用許可を受けていなければなりません。
 ただし、土地の取得が極めて困難な場所については、民間から貸与あるいは使用許可を受けることも認められます。その場合、事業の存続期間に係る地上権や賃借権を設定しなければなりません。

 

(2)特例

  • 特別養護老人ホームの設置
  • 地域活動センターの設置
  • 既存法人による福祉ホームの設置既存法人による通所施設の設置
  • 既存法人以外による保育所の設置
  • 構造改革特別地域において「サテライト型居住施設」または「サテライト型障害施設」の設置

 これらはそれぞれ別の通知に、資産の取扱いについての記載があります。

 

2.資産の区分

  • 基本財産
  • 運用財産
  • 公益事業財産(公益事業を行う場合に限る)
  • 収益事業財産(収益事業を行う場合に限る)

 

(1)基本財産

 基本財産は法人存立の基礎となるものです。
 「処分する場合、担保とする場合には、所轄庁の承認を受けなければならない」という旨を定款に記載しなければなりません。

 

 社会福祉施設を経営する法人は、すべての施設について、その施設の用に供する不動産を基本財産としなければなりません。ただし前述の「貸与・使用許可の法人」については、100万円(通知以後は1000万円)以上の資産(現金預金、不動産、確実な有価証券に限る)を基本財産として有していればよいです。

 

 社会福祉施設を経営しない法人(社会福祉協議会、共同募金会を除く)は、設立後の収入が不安定になるおそれがあるため、1億円以上の資産を基本財産として有していなければなりません(ただし安定が見込めるときには所轄庁の認める額の資産でよい)。
 社会福祉協議会と共同募金会については、300万円以上の資産を基本財産として有していなければならない。市町村や地区の社会福祉協議会は、300万円or 10円×人口 の金額を比較し、少ない方の金額の資産でかまいません。

 

(2)運用財産

 運用財産の処分等に制限はないが、社会福祉事業の存続要件となるような財産については、みだりに処分しないことと定められています。

 

(3)公益事業用財産 収益事業財産

 これらは他の財産と明確に区分して管理することが求められています。

 

3.資産の管理 について

 基本財産(社会福祉事業に使うものを除く)の管理運用は、安全確実な方法で行わなければいけません。以下の方法は適当ではありません。

  • 客観的評価が難しいもの(美術品、骨董品)
  • 減価償却資産(建物など)
  • 回収不能のおそれがあるもの(融資)

 なお、基本財産以外の資産についても、安全確実な方法で行うことが望ましい(「望ましい」なので、株式等による管理・運営は認められますが、支配のための保有や、公開市場以外での取得は認められません)です。価値変動が著しい資産、不安定な資産、算定が困難な資産が財産の大部分を占めないようにする必要があります。

 

4.残余財産の帰属 について

 「社会福祉法人が解散した場合、残余財産は他の社会福祉法人○○○に帰属する」と定款に記載することが望ましいです。定款で帰属者を定めない場合には、国に帰属します。

 

第3 社会福祉法人の組織運営

1.役員

 関係行政庁の職員が社会福祉法人の役員となることは、差し控えること(公私分離の原則)。ただし社会福祉協議会においては、役員総数の1/5以内なら差し支えありません。
 地方公共団体の長など、特定の公職にある者が役員となることは適当ではありません。また、名目的な役員は不適当です。

 

2.理事

 定数は6名以上とします。
 各理事と親族等特殊の関係にある者が、一定数を超えてはなりません。
 代表権は、理事とその特殊の関係にある者のみで占有してはなりません。
 施設整備または運営に密接に関連する業務を行う者が理事の1/3を超えてはなりません。
 社会福祉事業について学識経験を持つ者or地域の福祉関係者を必ず加えること。
 施設長等を1人以上理事とすること(施設経営の実態を法人運営に反映させるため)。ただし評議員会を設置していない法人については、施設長等の理事の人数は理事の1/3を超えてはなりません。

 

※「社会福祉事業について学識経験を持つ者」とは?

  • 社会福祉に関する教育者
  • 社会福祉に関する研究者
  • 社会福祉事業あるいは社会福祉行政に携わったことのある者
  • 公認会計士、税理士、弁護士など、社会福祉事業経営に必要かつ有益な専門知識を持つ者

 

※「地域の福祉関係者」とは?

  • 社会福祉事業を行う団体の役職員
  • 民生委員
  • 児童委員
  • 社会福祉に関するボランティア団体の代表者等
  • 社会福祉に関する民間団体の代表者等保健医療関係者(医師、保健師、看護師等)
  • その者の参画により施設運営や在宅福祉事業の円滑な進行が期待できる者

 

3.監事

 定数は2名以上とします。
 理事、評議委員、職員などと兼任することはできません。
 監事のうち1人は、社会福祉事業について学識経験を持つ者or地域の福祉関係者としなければなりません。
 監事のうち1人は、財務諸表等を監査することができる者でなければなりません。なお監事監査を行ったさいには、監査報告書を作成の上、理事会・評議員会に報告し、法人において報告すること。
 監事は、他の役員と親族等特殊の関係にある者であってはなりませんし、施設整備または運営に密接に関連する業務を行う者であってはならなりません。

 

4.評議員会

 以下の事業のみを行う場合は、設置しなくてもよいとされています。

  • 措置委託事業
  • 保育経営事業
  • 介護保険事業

 評議員会とは、諮問機関であり、法人業務の重要な決定について、あらかじめ意見を聴くための機関です。
 理事や監事、評議員など役員の選任は、評議員会で行うこととするのが適当です。
 施設整備または運営に密接に関連する業務を行う者が評議員の1/3を超えてはなりません。
 評議員には地域の代表を必ず加えること(社会福祉事業の経営には地域との連携が必要)。利用者の立場に立った事業経営を図るため、利用者家族の代表を加えることが望ましいです。
 社会福祉協議会においては、区域内の社会福祉事業の役職員およびボランティア団体の代表者を評議員として加えること(地域福祉の推進役という役割のため)。
 評議員の定数は理事の2倍超とすることとされています。

 

5.法人の組織運営に関する情報開示等

 公認会計士や税理士等による外部監査を積極的に行うこと。5年に1回程度が望ましいとされています。
 以下の要件に当てはまる法人は2年に1回程度が望ましいです。

  • 資産額が100億円以上
  • 負債額が50億円以上
  • 収支決算額が10億円以上

 

6.その他

 役員の定数は確定数とすること = 「~人程度」や「~以上」と定めるのではなく、確実に「~人」とします。
 役員の欠員は定数の1/3までは認められますが、すぐに補充することが望ましいです。
 役員の任期は2年を超えることはできません。ただし後任が選出されるまでは職務にあたってもよいとされています。

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